皮膚の構造
皮膚は人体最大の臓器と言われています。
外側から順番に表皮、真皮、皮下組織と三つの層に分かれています。

皮膚の断面図
皮膚の主な役割は、以下の6つがあります。
1.バリア機能
外部からの刺激(圧力、紫外線、乾燥、ほこりなど)から体内の水分や諸器官を守る
2.体温調節機能
外部の温度を伝わりにくくして、体温を一定に保つよう調整する
体温が上昇してくると身体全体に分布している汗腺(エクリン腺)が発汗して体温を下げる
3.感覚機能
複数の感覚器が、温覚<冷覚<触覚<痛覚などの外界の刺激を脳に伝える
温覚が最も鈍く痛覚が最も敏感です
4.分泌、排泄機能
皮脂や汗を分泌して老廃物を排出する
5.経皮吸収機能
表皮や毛穴を通して外界から薬剤などを吸収する
表皮角層間を通るものと皮脂腺から吸収されるものがあります
6.免疫機能
侵入した異物や細菌などを排除して体を守る
表皮
表皮の厚さ・・約0.1~0.2 mm
表皮は肌の一番外側にあり、外部からの異物の侵入や体の水分蒸散を防ぐバリア機能の役割があります。
表皮の構造

表皮の構造
外側から角層(角質層)、顆粒層(かりゅうそう)、有棘層(ゆうきょくそう)、基底層の4層からなり、表皮の大部分をケラチノサイトとケラチノサイトが変化した細胞で占められています。
ケラチノサイト・・・基底細胞が分裂したものでターンオーバーの出発地点
その他にはメラノサイト、ランゲルハンス細胞、メルケル細胞が表皮を構成しています。
メラノサイト・・・肌が紫外線を浴びるとメラニンを作る細胞
ランゲルハンス細胞・・・体内に異物が侵入した時に、アレルギー反応を起こして侵入被害を取り除く
メルケル細胞・・・基底層に存在し、感覚を感知する
角層( 角質層)
人体の一番外側の細胞層で厚さは平均約0.02 mm (ラップ一枚分ほど )で約10層から20層重なって角層を作っています。
ターンオーバーの最終地点で、垢となって剥がれ落ちます。
細胞と細胞の間にはラメラ構造からなる細胞間脂質(セラミドなど)があります。
ラメラ構造・・・油分と水分の層が交互に規則正しく重なり合うこと(下図のサンドイッチ状態のことです)
細胞間脂質とは・・・水分子の層と脂質の層が交互に規則正しく重なり合うラメラ構造と言う層を形成し、強力なバリア機能と水分の過剰な蒸散を防ぐ機能を持っています。
角層の役割
ラメラ構造(サンドイッチ状態)になることで、バリア機能や水分保持機能を持ち、皮膚を乾燥や外部刺激から守っています。
顆粒層
顆粒層は角層のすぐ下にあり、扁平な顆粒細胞からなる数層の層で構成されています。
顆粒層の役割
角層と共に肌のバリア機能の働きがあります。
細胞質中にケラトヒアリン顆粒と言うガラス状の粒が多く存在し、紫外線を強く屈折させ肌の奥へ浸透するのを防いでくれます。
またターンオーバーの過程で顆粒層から角層へ変化する段階でケラトヒアリン顆粒を構成するタンパク質が角層で分解され、アミノ酸が生成されます。
そのアミノ酸が主成分となりNMF( 天然保湿因子)や細胞間脂質(セラミドなど)が作られ角層へと放出され保湿をしてくれます。
NMF( 天然保湿因子)とは・・・アミノ酸が主な成分で、その他PCA(ピロリドンカルボン酸) 、乳酸ナトリウム、尿素などの保湿成分が集まったもの
有棘層(ゆうきょくそう)
表皮の中で一番厚い層で、数層から10層ほどで構成されています。
有棘細胞の外面は棘(とげ)の形をしており、細胞と細胞が棘て結ばれているように見えるため有棘層と呼ばれています。
有棘層の役割
有棘層にはリンパ液が流れていて知覚神経もあります。
有棘層の中にはランゲルハンス細胞(免疫細胞)があり、体内に侵入した物質が異物かどうかを判別しています。
異物と判断した場合は、リンパ節に伝えてアレルギー反応を起こし体外へと排出しようとする免疫反応の役割をしています。
また角層や顆粒層を構成するタンパク質も合成されています。
ランゲルハンス細胞(免疫細胞)
皮膚内部の状況を脳へ情報伝達します。 異物が侵入するとアレルギー反応を起こし侵入物を排除し肌内部の状態を監視します。
ランゲルハンス細胞が活性化することで、皮膚の生体恒常性機能 (ホメオスタシス)が保たれ健やかな肌を維持することができます。
ランゲルハンス細胞が弱まる原因としては、加齢、活性酸素、紫外線、ストレスなどがあります。
基底層
表皮の一番下にある層で、一層の基底細胞からなる縦長な層で基底膜を介して真皮と密着しています。
基底層で外部刺激やダメージから真皮層を守っています。
基底細胞は分裂して、ケラチノサイト(角化細胞)を作ります。
ケラチノサイトは、拡散された酸素や栄養分を受け取る働きがあります。
基底層の役割
細胞分裂で新しい細胞を生み出すターンオーバーのスタート地点になります。
基底細胞が分裂してケラチノサイトを作ると、 最も内部にある基底層から 有棘層、顆粒層、角層へと移動していき、垢となって外部へ放出されます。
理想的なターンオーバーの周期は、 基底層で細胞ができてから約14日間で角層へ移動し、さらに約14日間で剥がれ落ちるという約28日間が理想的だと言われています。
実際には、肌の状態や紫外線の影響などでバラつきがあります。
また年齢とともに細胞の機能が低下するため遅くなります。
他に基底層にはメラノサイト(色素細胞)があり、メラノサイトが紫外線から体を守る色素(メラニン色素)を放出し真皮に紫外線が届かないように防御します。
日焼けで肌が黒くなるのは メラニンが作られるためです。
基底膜
表皮と真皮の境目にある薄い膜(1/10,000 mm)。それぞれ異なる構造を持つ表皮と真皮を分けるネットのような働きをしています。
基底膜の役割
表皮と真皮を接着させ、それぞれの働きを潤滑に保ってくれます。
表皮と真皮の間で、物質の透過に対してフィルターの役割をしたり栄養や老廃物などの移動の調節に関わる大切な働きをしています。
またリンパ球や神経線維など特殊な細胞 以外は通り抜けられないため、病原菌などの侵入を防ぐ役割もしています。
基底膜の年齢による変化やダメージ
若い肌の基底膜はしっかりとした曲線で表面積も大きく、皮膚に弾力性があります。
老化すると基底膜の曲線はなくなり、肌の弾力もなくなります。
また紫外線が肌に当たると表皮や真皮から分解酵素が作られます。
紫外線を繰り返し浴びてしまうと、基底膜が断裂しダメージを受けてしまいます。
基底膜が損傷すると表皮細胞の働きが悪くなり、表皮、真皮両方に影響が及びターンオーバーが乱れ、メラニンや古い角質を排出することができずシミやくすみの原因となります。
真皮
真皮は表皮の内側にあり肌組織の大部分を占めています。
真皮の厚さは約2ミリ前後で約70%はコラーゲンという線維状のタンパク質が占めています。
その間をヒアルロン酸などのゼリー状の基質が、水分を保つことにより保湿をしてくれます。
基質とは・・・線維と線維の間を満たすゼリー状の物質で、 ヒアルロン酸の他タンパク質やビタミンなどが溶け込んでいます。
これにエラスチンという線維状のタンパク質も加わり肌に弾力を与えています。
これらの線維を生み出す役割をしている細胞を線維芽細胞と言います。
その他に血管やリンパ管、汗腺も存在します。
真皮は乳頭層と網状層に分かれています。
乳頭層は表皮の基底細胞に栄養を送る働きがあります。
もう一つの網状層は、真皮の大部分を占めており線維芽細胞がコラーゲンなどを作っています。
そのコラーゲンがたくさん集りコラーゲン線維となり、肌組織の弾力を保つ役割を担っています。
コラーゲン線維は網目状に並んでいるので、網状層と呼ばれています。
線維芽細胞
コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸など重要な成分を生み出します。 (お母さん細胞とも呼ばれています)
また自らも分裂して新しい線維芽細胞を作ります。
そしてさらに古くなった線維や基質内の成分も分解してくれます。
その他には、傷ついた肌を治す時に線維芽細胞が集まってきて組織を修復してくれます。
線維芽細胞の減少や機能低下の原因
コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン、線維芽細胞はそれぞれ20歳頃をピークに減少します。
細胞年齢が上がるとコラーゲンを引っ張る力も衰え、肌にシワやたるみが増えます。
その他にも紫外線の影響や酸化により線維芽細胞にダメージを与えます。
線維芽細胞を活性化させるためには、血液からの栄養補給が十分であることが必要です。
そのためには規則正しい生活習慣、食生活、紫外線予防、線維芽細胞活性化成分配合のスキンケアや食品を取り入れるなどの対策が必要になります。
コラーゲン
タンパク質の一種で線維芽細胞から作られています。このコラーゲンがたくさん集まって線維状になったものをコラーゲン線維、または膠原(こうげん)線維と言います。
コラーゲンが含まれる体の部位は約40%が皮膚、骨や軟骨が10~20% その他血管や内臓にもコラーゲンは存在します。
コラーゲン分子はアミノ酸が繋がり三重らせん構造をしていて、ハリと弾力を与えるための重要な働きをしています。
平均的な日本人女性(体重53 kg )の場合、体内のコラーゲン量は約3 kg になると言われています。
しかしコラーゲンは食べても、そのままコラーゲンにはなりません。
コラーゲンが体の中で消化されると、アミノ酸やペプチド(アミノ酸が2、3個結合したもの)になります。
ただ最近の研究によると、コラーゲンペプチドの摂取により肌の水分量の増加や、傷の修復、関節の状態改善につながることが判明しています。
高齢者に多い骨粗鬆症は、カルシウム不足だけでなく加齢による体内コラーゲンの減少も要因となっています。
コラーゲンペプチドを摂取することにより線維芽細胞を活性化させ、コラーゲンがもつ柔軟性を保つことで骨がもろく折れやすくなるのを防いでくれます。
コラーゲンは代謝にかかる時間が長く、体内で作られてから10年から20年かけて分解されます。
体内にコラーゲンが長くいると 糖と 体内のコラーゲンが結合してコラーゲンが糖化してしまいます。
コラーゲンが糖化すると肌のハリや弾力が低下します。
皮膚は紫外線を浴びると、多くの分解酵素を作り出し皮膚中のコラーゲンもダメージを受けます。
毎日紫外線を浴び続けると、皮膚の中のコラーゲンは常にダメージを受けている状態となり、放置しているとしわやたるみの原因となります。
エラスチン
真皮にあるタンパク質で2%~数%。ゴムのように伸び縮みする性質を持っていて真皮や血管、靭帯など体内で弾力性や伸縮性が必要とされる組織に存在します。
エラスチンの役割
コラーゲンを束ね、ハリや弾力を保ってくれる弾性線維。
二十歳をピークに減少していき、元に戻らず減っていく一方だと言われています。
そのため紫外線対策や、線維芽細胞を活性化させることが大事です。
エラスチンが減少する原因としては、加齢、ストレス、紫外線、糖化などで減少していきます。
ヒアルロン酸
線維芽細胞から作られ、細胞間を水分で満たし保持してくれます。
ヒアルロン酸は1g で6 L の水分を保持できると言われています。
また表皮幹細胞からもヒアルロン酸を作り出しています。
ヒアルロン酸も二十歳をピークに減少しますので、線維芽細胞を活性化させることや低分子ヒアルロン酸の化粧品や食品を選ぶことが大事です。
体内でヒアルロン酸を増やすためにN- アセチルグルコサミンを摂取するのもおすすめです。
N- アセチルグルコサミン・・・人間の体内に存在する重要な糖質成分で、サプリメントで摂取しても体内のものと同じなので体内組織との相性が良いという特徴があります。特にひざの痛みを和らげる効果に期待できます。
血管
真皮全体に分布し皮下組織にある動脈や静脈につながっています。
毛細血管は、ちょうどトラック(車)の仕事に似ていて栄養、酸素、水分を配達して老廃物や二酸化炭素を持ち帰るという働きがあります。
配達先は、表皮の基底細胞や真皮の線維芽細胞です。
また肌の血管は体温調節の働きもあります。暑くなると血管が拡張し血液を流し熱を体外へ逃がしてくれます。
逆に寒くなると血管が収縮し表面の血液を少なくして熱が逃げるのを防いでくれます。
血流が悪くなると栄養などが届かず、くすみや肌の調子にも影響してきます。(血行不良)
血液の流れを良くするためには
- 首や手首、足首を冷やさない
- 暖かい服装を心がける
- 湯船につかる
- 体を温める食材を摂る
- フェイシャルマッサージも血流を良くするので効果的
リンパ管
毛細血管に寄りそうように存在する毛細リンパ管のことを指します。
肌の中の老廃物を排出する役割があります。
リンパの流れが悪くなると、むくみや冷え、肌の調子が悪くなどの症状が出ます。
リンパの流れが悪くなる原因
- 運動不足
- 冷え
- サイズの合わない衣類などの締め付け
- 姿勢の悪さ
皮脂腺
皮脂を分泌する器官で、皮脂は毛穴から出て角層の表面に広がり水分の蒸発を防いで肌の潤いを守る役割をします。
皮脂量は、気温が高くなったり乾燥すると増加します。
また思春期以降から20代にかけて急激に増加し、その後減少していきます。
皮脂量が多い部位は、頭皮や T ゾーン。
皮脂は皮膚の表面で汗と混ざり合って皮脂膜を作ります。
皮脂膜にはバリア機能や保湿の働きがあるのですが、時間が経つと雑菌の繫殖により臭いの原因にもなります。
特にアポクリン汗腺から出た汗と混ざると、独特の臭いを放ちます。
汗腺
エクリン汗腺とアポクリン汗腺があります。
エクリン汗腺は身体全体に分布していて、アポクリン汗腺は特定の部位(ワキ、デリケートゾーンなど)にあります。
どちらも体温調節機能の役割があります。
皮脂膜
皮脂腺から分泌される皮脂の成分、汗腺から分泌される汗の成分である水分や塩化ナトリウムなどによって構成されています。
皮脂膜はお肌の水分が蒸発するのを防ぐ働きがあり天然の保湿クリームと呼ばれています。
皮脂膜の役割
肌の水分の蒸発を防ぎ肌の滑らかさを保つ働きがあります。
また細菌や有害物質の侵入を防ぐ働きがあり、暑さ寒さなど気温の変化から肌を守ってくれます。
その他の機能としては表皮常在菌の育成を助け、表皮を弱酸性( pH4.5から6.5)に保ってくれます。
真皮は化粧品が届かない部位にあたるため紫外線から肌を守る、生活習慣、体の内側からのケア、適度なマッサージなど健康な体づくりも大切です。
皮下組織
肌の三層構造のうち最も内側にある組織で表皮と真皮を支えています。
大部分が皮下脂肪で、そこに動脈や静脈が通っていて肌組織に栄養を届けたり老廃物を運び出したりします。
皮下脂肪は保温効果が高く熱を外に逃がしにくい(脂肪は熱伝導率が低く、一度保った熱を逃がしにくい)
また内臓を正常な位置に保ち、骨や筋肉が傷つかないように外部衝撃から守る役割があります。
脂肪組織に蓄えられた脂肪は、エネルギー源として必要な時に燃焼し不足したエネルギーを補ってくれます。
美容と健康は密接なつながりがあります。
体内の状態は、必ずお肌に現れます。
日頃から生活習慣に気をつけ、不足しがちな成分は食事や化粧品、サプリメントなどから摂取して美肌づくりをしていきましょう。
『20歳の顔は自然の贈り物
50歳の顔はあなたの功績』
【ココ・シャネル】